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来で過ぐす秋はなけれど初雁の
聞くたびごとにめづらしきかな

歌の意味
雁が来ないままで過ぎる秋はないけれど、初雁の声は、聞くたびごとに新鮮に感じられることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 168

詞書「題しらず」
 雁が来ないまま過ぎる秋は一度もないのに、初雁の声は聞くたびに新鮮に感じられると詠む歌である。毎年必ず訪れるものであっても、その初音には変わらぬ感動があることを表している。

 初句「来で過ぐす」は、来ないで過ごす、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
 二句「秋はなけれど」は、秋はないけれど、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 三句「初雁の」は、その秋初めて渡ってきた雁をいう。本巻の第百六十二首で待ちわびられた雁の声が、本歌でようやく聞かれている。
 四句「聞くたびごとに」は、聞くたびに、の意である。
 結句「めづらしきかな」は、新鮮で心ひかれることだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。毎年必ず来るという恒常と、聞くたびの新しさとの対比で一首を結んでいる。

はつかり:その秋初めて北から渡ってくる雁。初雁
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
植ゑたてて君が標結ふ花なれば 玉と見えてや露も置くらん
次の歌
逢坂の関の岩かど踏みならし 山立ち出づる桐原の駒