古典和歌stream

杉板もて葺ける板間のあはざらば
いかにせむとか我が寝そめけん

歌の意味
杉の板で葺いた屋根の板の継ぎ目が合わないように、あの人と逢わなくなったなら、どうしようと思って、私は共寝をし始めたのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 746

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 杉板で葺いた屋根の板の継ぎ目が合わないように、逢えなくなったらどうするつもりで共寝をし始めたのだろうかと詠む歌である。「あは」に板の継ぎ目が「合は」と人に「逢は」を掛け、屋根板の隙間に、逢えない不安を重ねている。万葉集にも、真木の板で葺いた板目が合わなかったらと詠む類歌が見える。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。

 初句「杉板もて」は、杉の板で、の意で、六音の字余りの句である。
 二句「葺ける板間の」は、屋根を葺いた板の隙間が、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。ここまでが三句の「あは」を導く序詞である。
 三句「あはざらば」は、「あは」が板の継ぎ目が「合は」と、人に「逢は」を掛ける掛詞で、逢わなくなったならば、の意である。
 四句「いかにせむとか」は、どうしようと思って、の意で、係助詞「か」は結句の連体形「けん」で結ぶ係り結びである。
 結句「我が寝そめけん」は、私は共寝をし始めたのだろうか、の意で、「そむ」は〜し始める意、「けん」は過去の原因を推量する助動詞である。

ふく:葺く。屋根を覆う
あふ:板が「合ふ」意と、人に「逢ふ」意を掛ける
ねそむ:寝初む。共寝をし始める
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
年を経て思ひ思ひて逢ひぬれば 月日のみこそうれしかりけれ
次の歌
来ぬかなとしばしは人に思はせむ 逢はで帰りし宵のねたさに