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捨てはてむ命を今は頼まれよ
逢ふべきことのこの世ならねば

歌の意味
すっかり捨ててしまおうとするこの命を、今はかえって頼みにしてほしい。あなたと逢えるのは、この世のことではないのだから。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 927

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 捨て果てようとするこの命を、今は頼みにしてほしい、あなたと逢えるのはこの世ではないのだから、と詠む歌である。この世では逢うことのかなわない恋の絶望から、命を捨てた後の来世での逢瀬に望みをかける、思い詰めた心が詠まれている。
 次歌の第九百二十八首から第九百三十四首まで、生と死や世の中を見つめる歌が続き、本歌はその始まりとなっている。

 初句「捨てはてむ」は、すっかり捨ててしまおうとする、の意で、「む」は意志を表す助動詞である。
 二句「命を今は」は、この命を今は、の意である。
 三句「頼まれよ」は、頼みにしてほしい、の意で、命令の形で相手に呼びかけている。ここで句切れとなる。
 四句「逢ふべきことの」は、逢うことができるのが、の意である。
 結句「この世ならねば」は、この世ではないので、の意である。三句の願いの理由を下の句で述べ、来世での逢瀬を思っている。

すてはつ:捨て果つ。すっかり捨ててしまう
たのむ:頼む。頼みにする、あてにする
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
住吉の岸に向かへる淡路島 あはれと君を言はぬ日ぞなき
次の歌
生き死なんことの心にかなひせば 再び物は思はざらまし