思ふ人ありて帰ればいつしかの
妻待つ宵の声ぞ悲しき
- 歌の意味
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思う人が都にいて帰る途中なので、早く早くと妻を待つ宵の声が、ひとしお悲しく聞こえる。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1365
詞書「京に思ふ人侍りて、遠き所より帰りまうで来ける道にとどまりて、九月ばかりに」
思う人があって帰るので、早くと妻を待つ宵の声が悲しい、と詠んだ歌である。都に恋しい人を残して遠国から帰る途中、九月の宵に、妻を求めて鳴く声を聞き、早く逢いたいと急ぐ自分の心と重ねて、ひとしお悲しく感じている。妻を待って鳴く声は、秋に妻を求めて鳴く鹿の声とみられる。
詞書によれば、京に恋しい人がいて、遠い所から帰ってくる途中、道中に泊まって、九月ごろに詠んだ歌である。次歌も同じ詞書の歌で、二首が並べて置かれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「思ふ人」は、恋しく思う人、の意で、都に残してきた人をいう。
二句「ありて帰れば」は、都にいて、そこへ帰るので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
三句「いつしかの」は、早く早くと待ち望む、の意である。
四句「妻待つ宵の」は、妻を待つ宵の、の意で、都で待つ人と、妻を求めて鳴く鹿とを重ねている。
結句「声ぞ悲しき」は、声が悲しい、の意で、「ぞ」を受けて連体形「悲しき」で結ぶ係り結びとなっている。
いつしか:早く、待ち望むさま
つま:配偶者、妻
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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草枕紅葉むしろに代へたらば 心をくだくものならましや
- 次の歌
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草枕結ふ手ばかりは何なれや 露も涙もおきかへりつつ