まだ知らぬおもひに燃ゆる我が身かな
さるは涙の河の中にて
- 歌の意味
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これまで知らなかった恋の思いの火に燃える我が身であることよ。そうはいっても、涙の川の中にいるというのに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 962
詞書は前の歌に続き「題しらず」
これまで知らなかった恋の思いの火に燃える我が身であることよ、それも涙の川の中にいながら、と詠む歌である。恋の火に燃えながら同時に涙の川に浸っているという、火と水の矛盾した取り合わせによって、恋の苦しみの激しさを機知的に詠んでいる。
本巻の第九百五十六首から続く雨と涙の歌を、涙の川によって締めくくり、次歌の第九百六十四首の涙の歌へとつないでいる。
初句「まだ知らぬ」は、これまで知らなかった、の意である。
二句「おもひに燃ゆる」は、恋の思いの火に燃える、の意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛けた掛詞である。本巻の第九百二十九首の四句「人をおもひの」と、恋の思いを火として詠む趣向を共有している。
三句「我が身かな」は、我が身であることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。ここで句切れとなる。
四句「さるは涙の」は、そうはいっても涙の、の意で、「さるは」は、それなのに、の意である。
結句「河の中にて」は、川の中にいて、の意である。「涙の河」は、とめどなく流れる涙を川にたとえた言葉で、巻第十四の第八百七十五首から第八百七十七首にも詠まれている。二句の「燃ゆる」火と、結句の涙の川の水とを対比している。
おもひ:「思ひ」と、恋の炎の「火」を掛ける
なみだがは:涙河。とめどなく流れる涙を川にたとえた語
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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君恋ふる涙のかかる袖のうらは 巌なりとも朽ちぞしぬべき
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風をいたみ思はぬ方に泊まりする 海人の小舟もかくやわぶらん