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春の野に掘る掘る見れどなかりけり
世にところせき人のためには

歌の意味
春の野で掘りに掘って探してみたけれども、ありはしなかった。世の中で所狭しと幅をきかせる、あなたのような人のための所などは。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1033

詞書「返し」
 春の野で掘りに掘って探したが見つからなかった、世の中で所狭しとふるまう人のための「ところ」は、と返した歌である。前歌の第千三十二首で、二人が寝るほどの所を見つけたかとからかわれたのに対し、「所狭し」の「所」に「野老」を掛け、あなたのように幅をきかせる人に合う所などないと、女の側から機知をもって切り返している。

 初句「春の野に」は、春の野で、の意で、前歌の第千三十二首の初句と同じ句で応じている。
 二句「掘る掘る見れど」は、掘りに掘って探してみたけれども、の意で、「掘る」を重ねて繰り返し探したことをいう。「ど」は逆接の接続助詞である。
 三句「なかりけり」は、なかったのだった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「世にところせき」は、世の中で所狭しとふるまう、の意で、「ところ」は「所狭し」の「所」と、山芋の「野老」を掛ける掛詞である。前歌の二句「ところ求むと」の掛詞を受けている。
 結句「人のためには」は、そのような人のためには、の意で、三句の「なかりけり」の対象を倒置して示している。

ところ:「所狭し」の「所」と、山芋の一種の「野老」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
春の野にところ求むと言ふなるは 二人寝ばかり見てたりや君
次の歌
かきくらし雪も降らなん桜花 まだ咲かぬ間はよそへても見む