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天雲の晴るる夜もなく降るものは
袖のみ濡るる涙なりけり

歌の意味
空の雲が晴れる夜もなく降り続けるもの、それは私の袖ばかりを濡らす涙であったよ。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 814

詞書「思ふこと侍りて、男のもとにつかはしける」
 雲の晴れる夜もなく降るものは、袖ばかりを濡らす涙であった、と詠んだ歌である。晴れることのない空から降り続く雨に、絶え間なく流れる涙を重ね、心の晴れない悲しみを訴えている。
 詞書によれば、思い悩むことがあって、男のもとへ送った歌である。巻頭の第七百九十五首が恋の思いを降る雨にたとえたのに対し、本歌は涙を降るものとしており、雨の景物を共有している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。なお本文の作者表記は「よみ人も」とあり、よみ人しらずを示している。

 初句「天雲の」は、空の雲の、の意である。
 二句「晴るる夜もなく」は、晴れる夜もなく、の意で、心が晴れることのない日々を重ねている。
 三句「降るものは」は、降るものは、の意で、雨にたとえて涙を導いている。巻頭の第七百九十五首の結句「降る雨のごと」と呼応している。
 四句「袖のみ濡るる」は、袖ばかりが濡れる、の意で、「のみ」は限定を表す。
 結句「涙なりけり」は、涙であったよ、の意で、前歌の第八百十三首と同じ結句である。

あまぐも:空の雲
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
いにしへの野中の清水見るからに さしくむものは涙なりけり
次の歌
逢ふことのかたふたがりて君来ずは 思ふ心のたがふばかりぞ