水のあやをおりたちて着む脱ぎ散らし
七夕つめに衣貸す夜は
- 歌の意味
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水面の綾を、川に下り立って身にまとおう。着物を脱ぎ散らして、七夕の織女に衣を貸す今夜は。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1091
詞書「仁和御屏風に、七月七日女の川浴みたる所」
七夕の夜は着物を脱ぎ散らして織女に貸し、自分は川に下り立って水の綾をまとおうと詠む歌である。詞書から、仁和の頃の屏風に描かれた、七月七日に女が川で水浴みをしている絵に添えた歌とわかる。七夕に衣を供える習わしを背景に、川で水浴みをする女の姿を、衣を織女に貸したためと興じて描いている。
作者の「平定文」は平貞文である。桓武平氏の出で、平中と呼ばれた色好みの歌人として知られ、その恋の逸話は平中物語に伝えられる。中古三十六歌仙に数えられる。
初句「水のあやを」は、水面に立つさざ波の模様を綾織物に見立てた語で、六音の字余りの句である。
二句「おりたちて着む」は、下り立って身にまとおう、の意で、「おり」は川に「下り」と、綾を「織り」を掛ける掛詞であり、「む」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「脱ぎ散らし」は、着物を脱ぎ散らして、の意である。
四句「七夕つめに」は、織女に、の意で、次歌の第千九十二首の二句「七夕つめに」と同じ語を共有している。
結句「衣貸す夜は」は、衣を貸す夜は、の意で、上の句の理由を倒置して示している。本巻の第千八十七首の二句「我が貸す糸は」、第千八十八首の結句「猶や貸さまし」とともに、七夕に物を貸すという言い方を共有している。「あや」「織り」「衣」は縁語をなしている。
あや:綾。模様を織り出した絹織物。ここでは水面のさざ波の模様に見立てる
おりたつ:川に「下り立つ」意に、綾を「織り」を掛ける
たなばたつめ:七夕つ女。織女星のこと
- 作者
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平貞文
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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琴の音はなぞやかひなき七夕の あかぬ別れをひきしとめねば
- 次の歌
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秋風よ七夕つめに言問はん いかなる世にか逢はんとすらん