幾世経し磯辺の松ぞ昔より
立ち寄る波や数は知るらん
- 歌の意味
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幾世を経てきた磯辺の松なのか。昔からこの松に立ち寄せてきた波こそ、その数を知っているだろう。
- 鑑賞
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巻第十八 雑賀 1169
詞書「延喜の御時、斎院の屏風四帖、宣旨によりて」
磯辺の松は幾世を経てきたのか、昔から立ち寄せてきた波こそがその数を知っているだろうと詠む歌である。詞書から、醍醐天皇の延喜の御代に、賀茂の斎院の屏風四帖のために、宣旨を受けて詠んだ歌とわかる。人には数えきれない松の齢を、絶えず寄せてきた波だけが知っているとして、松の長寿を通して限りない齢を祝っている。本巻の第千百六十四首から続く松の歌の一つで、峰の松を詠んだ前歌の第千百六十八首に対し、海辺の松を詠んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「幾世経し」は、幾世を経てきた、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
二句「磯辺の松ぞ」は、磯辺の松なのか、の意で、「ぞ」は文末で問いを強める。ここで句切れとなる二句切れの歌である。前歌の第千百六十八首の四句と結句「尾上に立てる松も」の峰の松に対し、ここでは海辺の松を詠んでいる。
三句「昔より」は、昔から、の意である。
四句「立ち寄る波や」は、立ち寄せてきた波が、の意で、係助詞「や」は結句の「らん」で結ぶ係り結びである。
結句「数は知るらん」は、その数を知っているだろう、の意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形である。寄せる波の数と松の齢の数を重ねている。
いそべ:磯辺。岩の多い海辺
さいゐん:斎院。賀茂神社に奉仕した未婚の皇女
せんじ:宣旨。天皇の命令を伝える文書
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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我のみや子持たるてへば高砂の 尾上に立てる松も子持たり
- 次の歌
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濃紫たなびく事をしるべにて 位の山の峰を尋ねん