あやしくも我が濡れ衣を着たるかな
三笠の山を人に借られて
- 歌の意味
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不思議なことに、私は濡れ衣を着せられたことだ。三笠の山を、つまり近衛の少将の名を、人に借りられて。
- 鑑賞
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巻第十八 雑賀 1191
詞書「同じ少将通ひ侍りける所に、兵部卿致平の親王まかりて、少将の君おはしたりと言はせ侍りけるを、後に聞き侍りて、かの親王のもとに遣はしける」
不思議なことに私は濡れ衣を着せられた、三笠の山を人に借りられてと詠む歌である。詞書から、少将であった義孝が通っていた女のもとに、兵部卿致平親王が出かけ、少将の君がおいでになったと取り次がせたのを、後で聞いた義孝が親王に送った歌とわかる。近衛府の異称である「三笠の山」を用いて、少将の名を勝手に借りられた迷惑を、濡れ衣という言葉で軽妙にとがめている。致平親王は村上天皇の皇子である。
作者の藤原義孝は、摂政藤原伊尹の子で、右少将を務めたが、二十一歳の若さで世を去った。中古三十六歌仙の一人で、百人一首の「君がため惜しからざりし」の歌で知られる。
なお本文の二句は「わかぬれきぬを」とあり、読み仮名の行の「われぬれきぬを」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「あやしくも」は、不思議なことに、の意である。
二句「我が濡れ衣を」は、私の濡れ衣を、の意で、「濡れ衣」は身に覚えのない噂や罪をいう。
三句「着たるかな」は、着せられたことだ、の意で、「たる」は完了の助動詞、「かな」は詠嘆を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。次歌の第千百九十二首の四句「きたりと人に」と、「着る」の語でつながっている。
四句「三笠の山を」は、近衛府の異称の三笠の山を、の意で、近衛の少将である義孝の名をいう。
結句「人に借られて」は、人に借りられて、の意で、「れ」は受身の助動詞である。三句の理由を倒置して示している。
ぬれぎぬ:濡れ衣。身に覚えのない噂や罪
みかさのやま:三笠の山。奈良の山。近衛府の異称としても用いる
- 作者
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藤原義孝
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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つらからば人に語らむしきたへの 枕交はして一夜寝にきと
- 次の歌
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隠れ蓑隠れ笠をも得てしかな きたりと人に知られざるべく