春来れば杉のしるしも見えぬかな
霞ぞ立てる三輪の山もと
- 歌の意味
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春が来ると、目印の杉も見えなくなってしまうことだ。三輪の山のふもとには霞が立ちこめている。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 10
詞書「霞の歌とてよめる」
「霞」を題として詠んだ歌である。三輪山のふもとは杉を目印として知られる所であるが、春が来て霞が立ちこめると、その目印の杉さえ見えなくなってしまうと詠む。古歌に名高い三輪の杉を霞の中に隠すことで、春霞の深さを表している。
作者の「刑部卿頼輔」は藤原頼輔である。大納言藤原忠教の子で、刑部卿に至った。蹴鞠の名手として知られ、兄に藤原教長がいる。
古今和歌集のよみ人しらずの歌「我が庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門」を本歌とし、杉を目印とする三輪の山もとを詠む。
初句「春来れば」は、已然形に「ば」が付いた形で、春が来ると、の意である。
二句「杉のしるしも」の「しるし」は目印の意である。本歌で庵の門の目印とされた杉を指す。
三句「見えぬかな」は、見えなくなってしまうことよ、の意で、「かな」は詠嘆である。ここで句切れとなる。
四句「霞ぞ立てる」の「ぞ」は係助詞で、存続の助動詞「り」の連体形「る」と係り結びをなす。杉が見えない理由を示す。
結句「三輪の山もと」は本歌の句をそのまま用いた体言止めである。次歌の第十一首も同じく「三輪の山もと」で結び、霞に隠れた三輪の杉を詠む歌が二首並べられている。
しるし:目印
みわのやま:大和国の三輪山で、杉が神木とされた
- 作者
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藤原頼輔
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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我妹子が袖ふる山も春来てぞ 霞の衣たちわたりける
- 次の歌
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見渡せばそこと標の杉もなし 霞のうちや三輪の山もと