- 歌の意味
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いとしい妻が袖を振るという布留の山にも、春が来て、霞の衣が一面に立ちわたったことだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 9
詞書「堀河院御時、百首歌のうち、霞の歌とてよめる」
堀河百首の中で「霞」を題として詠んだ歌である。大和の布留山にも春が来て、山が霞の衣をまとったように一面に霞が立ちわたっていると詠む。「我妹子が袖ふる」と恋人の袖を思わせる言葉で山の名を導き、霞を衣に見立てることで、山全体を春の装いをした人の姿のように描いている。
作者の「前中納言匡房」は大江匡房である。大江成衡の子で、学者として後三条、白河、堀河の三代の天皇に仕え、権中納言に至った。博識で知られ、堀河百首の作者の一人である。
初句から二句は、万葉集の柿本人麻呂の歌「娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我は」の言い回しを踏まえる。
初句「我妹子が」は、いとしい妻や恋人が、の意で、二句の「袖ふる」を導く。
二句「袖ふる山も」の「ふる」は、袖を「振る」と地名の「布留」との掛詞である。布留山は大和国石上の山で、石上神宮がある。
三句「春来てぞ」の「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」と係り結びをなす。
四句「霞の衣」は、山にかかる霞を衣に見立てた表現で、二句の「袖」と縁語の関係にある。
結句「たちわたりける」の「たち」は、霞が「立つ」意と衣を「裁つ」意との掛詞で、「衣」の縁語となる。「わたる」は一面に広がる意で、「ける」は「ぞ」の結びである。
わぎもこ:親しい妻や恋人を呼ぶ語
ふる:袖を「振る」意と、大和国の地名「布留」を掛ける
たつ:霞が立つ意と、衣を裁つ意を掛ける
- 作者
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大江匡房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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霞敷く春の潮路を見渡せば 緑を分くる沖つ白波
- 次の歌
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春来れば杉のしるしも見えぬかな 霞ぞ立てる三輪の山もと