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五月雨の雲の晴れ間に月冴えて
山時鳥空に鳴くなり

歌の意味
五月雨を降らせる雲の晴れ間に、月が冴え冴えと照って、山時鳥が空で鳴いているのが聞こえる。
鑑賞
巻第三 夏歌 188

詞書「月前郭公といへる心をよめる」
 「月前郭公(月の前の時鳥)」という題で詠んだ歌である。五月雨の雲がとぎれた晴れ間に月が冴え冴えと照り、その空で山の時鳥が鳴いている、と詠む。長雨の合間の澄んだ月と時鳥の声とを取り合わせ、五月雨の一連のあとに晴れやかな景を置いている。ここから再び時鳥を詠む歌が続く。
 作者の「賀茂成保」は賀茂社に仕えた神官の一族の人である。詳しい伝は明らかでない。
 本歌から第百九十三首までの六首は、五月雨の頃の時鳥を、月、雨、関、山など、さまざまな題によって詠む一連である。

 初句「五月雨の」は、二句の「雲」にかかり、前の一連の五月雨を受ける。
 二句「雲の晴れ間に」は、雲がとぎれた晴れ間に、の意である。
 三句「月冴えて」の「冴ゆ」は冷たく澄みわたる意で、月の光が澄んで照るさまをいう。
 四句「山時鳥」は、山にすむ時鳥をいう。本巻の第百九十首も「山時鳥」を詠む。
 結句「空に鳴くなり」の「なり」は音や声をもとに判断する推定の助動詞である。本巻の第百五十七首、第百五十八首が「雲の底に鳴くなり」と雲の中の声を詠んだのに対し、本歌は雲の晴れ間の空に鳴く声を詠む。

はれま:雲がとぎれて晴れた間
さゆ:冷たく澄みわたる
作者
賀茂成保
出典
千載和歌集
前の歌
五月雨は苫の雫に袖濡れて あなしほどけの浪のうきねや
次の歌
をちかへり濡るとも来鳴け時鳥 今いくかかは五月雨の空