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夏の夜の月の光はさしながら
いかにあけぬる天の戸ならん

歌の意味
夏の夜の月の光はまだ差したままで、天の戸も閉ざしたままであるのに、どうして夜は明け、天の戸は開いてしまったのだろう。
鑑賞
巻第三 夏歌 216

詞書「夏の月をよめる」
 「夏の月」を題として詠んだ歌である。夏の夜の月の光はまだ差しているのに、どうしてもう夜が明けてしまったのか、天の戸は閉ざしたままなのに、どうして開いてしまったのか、と詠む。「さし」に光が「射し」の意と戸を「鎖し」の意、「あけ」に夜が「明け」の意と戸を「開け」の意とを掛け、天の戸を縁として、月の残るうちに明ける夏の夜の短さを機知的に詠んでいる。
 作者の「祝部宿禰成仲」は祝部成仲である。日吉社の禰宜を務めた神官で、長寿を保ち、歌林苑にも加わった歌人である。

 初句「夏の夜の」は、二句の「月」にかかる。本巻の第二百十三首も「夏の夜の月」を詠む。
 二句「月の光は」は、一首の主語を示す。
 三句「さしながら」の「さし」は、月の光が「射し」の意と、戸を「鎖し」閉ざす意とを掛ける。「ながら」は逆接で、〜のままなのに、の意である。
 四句「いかにあけぬる」の「あけ」は、夜が「明け」の意と、戸を「開け」の意とを掛ける。「いかに」は疑問で、どうして明けてしまったのか、の意となる。
 結句「天の戸ならん」の「天の戸」は、天にあって夜明けとともに開くとされた戸である。「さし」「あけ」は「戸」の縁語である。前歌の第二百十五首の有明の月に続き、月の残るうちに明ける夜を詠む。

さす:光が「射す」意と、戸を「鎖す」意を掛ける
あく:夜が「明く」意と、戸を「開く」意を掛ける
あまのと:天にあって夜明けとともに開くとされた戸
作者
祝部成仲
出典
千載和歌集
前の歌
我ながらほどなき夜はや惜しからむ なほ山の端に有明の月
次の歌
夕立のまだ晴れやらぬ雲間より 同じ空とも見えぬ月かな