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踏みしだき朝行く鹿や過ぎつらむ
しどろに見ゆる野路の刈萱

歌の意味
踏み荒らしながら、朝に野を行く鹿が通り過ぎたのだろうか。野道の刈萱が、しどろに乱れて見える。
鑑賞
巻第四 秋歌上 244

詞書「雲居寺瞻西上人、房にて歌合し侍りける時、よめる」
 京の東山にあった雲居寺の瞻西上人の僧坊で催された歌合で詠んだ歌である。朝、野道の刈萱がしどろに乱れているのを見て、踏み荒らしながら朝の野を行く鹿が通り過ぎたのだろうか、と推し量る。乱れた刈萱という目の前の景から、姿の見えない鹿の通い路を思い描いている。
 作者の「藤原道経」は藤原顕綱の子である。和泉守を務め、従五位上に至った。藤原忠通の家の歌壇で活躍し、俊成を基俊に引き合わせたと伝えられる。
 本巻の第二百四十二首、第二百四十三首が風に乱れる刈萱を詠んだのに対し、本歌は鹿に踏み乱された刈萱を詠み、刈萱の乱れる理由を別のところに求めている。

 初句「踏みしだき」は、踏み荒らして、の意である。
 二句「朝行く鹿や」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らむ」と係り結びをなす。朝の野を行く鹿を思い描く。
 三句「過ぎつらむ」の「つ」は完了、「らむ」は現在推量の助動詞の連体形で、通り過ぎたのだろうか、と推し量る。ここで句切れとなる。
 四句「しどろに見ゆる」の「しどろに」は、乱れて秩序のないさまをいう。推量の根拠となる目の前の景を示す。
 結句「野路の刈萱」は体言止めで、野の道に生える刈萱をいう。本巻の第二百四十三首、第二百四十六首の結句「野辺の刈萱」と響き合う。

ふみしだく:踏み荒らす
のぢ:野の中の道
作者
藤原道経
出典
千載和歌集
前の歌
おしなべて草葉の上を吹く風に まづ下折るる野辺の刈萱
次の歌
秋来ぬと風も告げてし山里に なほほのめかす花すすきかな