思ひくまなくても年の経ぬるかな
物言ひ交はせ秋の夜の月
- 歌の意味
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思いやってくれる人もないままに、年を経てしまったことだ。せめて言葉を交わしてくれ、秋の夜の月よ。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 286
詞書「法性寺入道前太政大臣、内大臣に侍りける時、月毎秋友といへる心をよませ侍りける時、よめる」
法性寺入道前太政大臣藤原忠通がまだ内大臣であった頃、「月毎秋友(月は秋ごとの友)」という題で人々に歌を詠ませた際に詠んだ歌である。自分を思いやってくれる人もないまま年を重ねてしまった、毎年秋ごとに友として向き合ってきた秋の夜の月よ、せめて言葉を交わしてくれ、と詠む。題の「友」を受け、孤独な老いの身の嘆きを、月への呼びかけとして表している。
作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院歌壇の中心的な歌人で、白河院の院宣を受けて金葉和歌集を撰び、歌論書「俊頼髄脳」を著した。小倉百人一首にも歌が採られている。
結句の「秋の夜の月」は、本巻の第二百八十二首、第二百九十二首と同じ結句である。
初句「思ひくま」の「くま」は、思いやりの意の「思ひ隈」の「隈」に、月の曇りとなる「隈」を響かせる。
二句「なくても年の」は、思いやってくれる人もなくて、の意である。月に「隈なし」と言う表現とも響き合う。
三句「経ぬるかな」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆である。年月を過ごしてしまった嘆きを表し、ここで句切れとなる。
四句「物言ひ交はせ」の「交はせ」は命令形で、言葉を交わしてくれ、の意である。月を友として呼びかける。
結句「秋の夜の月」は体言止めで、呼びかけの相手を示す。本巻の第二百八十二首、第二百九十二首と同じ結句である。
くま:思いやりの意の「思ひ隈」の「隈」と、月の曇りとなる「隈」を響かせる
- 作者
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源俊頼
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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塩竈の浦吹く風に霧晴れて 八十島かけて澄める月影
- 次の歌
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山の端にますみの鏡掛けたりと 見ゆるは月の出づるなりけり