たぐひなくつらしとぞ思ふ秋の夜の
月を残して明くるしののめ
- 歌の意味
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比べるものがないほどつらいと思う。秋の夜の月を空に残したまま明けてゆく夜明けは。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 300
詞書は前の歌に続き「題しらず」
秋の夜の月をまだ空に残したまま明けてゆく夜明けほど、比べるものもなくつらいものはない、と詠む。一晩じゅう眺めた月を名残惜しく思いながら、夜明けがそれを奪ってゆくつらさを、月の残る有明の空に託している。
作者の「前大納言成通」は藤原成通である。権大納言藤原宗通の子で、大納言に至った。蹴鞠の名手として名高く、今様や管弦にも通じた。
古今和歌集の壬生忠岑の歌「有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし」のように、月の残る夜明けのつらさは古くから詠まれてきた。本歌は恋の別れではなく、月そのものとの別れのつらさを詠んでいる。
初句「たぐひなく」は、比べるものがないほど、の意である。
二句「つらしとぞ思ふ」の「ぞ」は係助詞で、「思ふ」と連体形で結ぶ。ここで句切れとなり、三句以下と倒置の関係にある。
三句「秋の夜の」は、四句の「月」にかかる。本巻の第二百八十二首、第二百八十六首、第二百九十二首の結句「秋の夜の月」と同じ語の連なりである。
四句「月を残して」は、月を空に残したまま、の意で、有明の月をいう。
結句「明くるしののめ」は体言止めで、夜明け方をいう。つらさの対象を最後に示す。
しののめ:夜明け方、東の空が白むころ
たぐひ:比べられるもの、同類
- 作者
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藤原成通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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おほかたの秋のあはれを思ひやれ 月に心はあくがれぬとも
- 次の歌
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照る月の旅寝の床やしもと結ふ 葛城山の谷川の水