- 歌の意味
-
照る月が旅寝をする床なのだろうか、葛城山の谷川の水は。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 301
詞書「法性寺入道前太政大臣の家にて、湖底月といへる心をよみ侍りける」
法性寺入道前太政大臣藤原忠通の邸で詠んだ歌である。葛城山の谷川の水に月が映っているのを、照る月が旅の途中で一夜を過ごす寝床なのだろうか、と見る。水底に映る月の姿を、旅寝をする月という擬人化でとらえ、山深い谷川に宿る月の趣を描いている。
作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院歌壇の中心的な歌人で、白河院の院宣を受けて金葉和歌集を撰び、歌論書「俊頼髄脳」を著した。小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の巻末の歌である。巻頭の第二百二十六首が「我が宿」の荻に秋の訪れを聞いたのに対し、巻末の本歌は月の「旅寝の床」を詠み、宿と旅寝とが呼応して本巻を結ぶ。また本巻の第二百九十五首と同じく「照る月の」で詠み起こす。
なお詞書の題は本文に「湖底月」とあるが、歌は谷川の水に映る月を詠んでおり、他の伝本では「澗底月」とされる。
初句「照る月の」は、照り輝く月の、の意である。本巻の第二百九十五首と同じ初句である。
二句「旅寝の床や」の「旅寝」は旅先で寝ること、「床」は寝床である。「や」は疑問の係助詞で、旅寝の床なのだろうか、と問いかける。ここで句切れとなる。水に映る月を、旅寝をする月と擬人化し、本巻巻頭の第二百二十六首「我が宿」と対をなす。
三句「しもと結ふ」は、「葛城」にかかる枕詞である。
四句「葛城山の」の「葛城山」は、大和国と河内国の境にある山である。
結句「谷川の水」は体言止めで、月が宿る寝床にあたるものを最後に示し、本巻を結ぶ。
しもとゆふ:「葛城」にかかる枕詞
かづらきやま:大和国と河内国の境にある山
たびね:旅先で寝ること
- 作者
-
源俊頼
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
たぐひなくつらしとぞ思ふ秋の夜の 月を残して明くるしののめ
- 次の歌
-
はるかなる唐土までも行くものは 秋の寝覚めの心なりけり