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おほかたの秋のあはれを思ひやれ
月に心はあくがれぬとも

歌の意味
世間一般の秋のしみじみとした哀れを思いやってほしい。たとえ月に誘われて、心がさまよい出てしまうとしても。
鑑賞
巻第四 秋歌上 299

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 たとえあなたの心が月に誘われてさまよい出てしまうとしても、世間一般の秋のしみじみとした哀れを、どうか思いやってほしい、と詠む。月の美しさに心を奪われる相手に向けて、秋の寂しさの中にある人の思いをくみ取ってほしいと訴える歌で、相手への呼びかけの形をとっている。
 作者の「紫式部」は越後守藤原為時の娘である。一条天皇の中宮藤原彰子に仕え、源氏物語の作者として知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
 家集の紫式部集では、人との贈答の中の一首として見える。本巻の第二百六十七首も「おほかたの」で詠み起こし、世間一般の露とわが袂の露とを対比しており、本歌の世間一般の秋の哀れと響き合う。

 初句「おほかたの」は、世間一般の、普通の、の意である。本巻の第二百六十七首と同じ初句である。
 二句「秋のあはれを」の「あはれ」は、しみじみとした情趣、寂しさをいう。
 三句「思ひやれ」は命令形で、思いやってほしい、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「月に心は」は、月に誘われて心は、の意である。
 結句「あくがれぬとも」の「あくがる」は心が身から離れてさまよい出る意で、「ぬ」は完了、「とも」は逆接仮定である。たとえさまよい出てしまうとしても、の意となる。

あくがる:心が身から離れてさまよい出る
作者
紫式部
出典
千載和歌集
前の歌
身の憂さの秋は忘るるものならば 涙曇らで月は見てまし
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たぐひなくつらしとぞ思ふ秋の夜の 月を残して明くるしののめ