逢ひ見むと言ひわたりしは行く末の
物思ふことのはしにぞありける
- 歌の意味
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逢いたいと言い続けてきたのは、行く末に物思いをすることの始まりであったのだなあ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 850
詞書「逢不逢恋といへる心を詠み侍りける」
「逢うて逢はざる恋」、すなわち一度は逢ったものの、その後逢えなくなった恋の題で詠んだ歌である。逢いたいと言い続けてきたのは、行く末の物思いの始まりであった、と詠む。逢うことを願っていた頃には、逢えさえすれば思いが晴れると信じていたが、逢えた後にかえって深い物思いが始まったと、恋の皮肉な成り行きを振り返っている。
作者の「大納言成通」は藤原成通である。権大納言藤原宗通の子で、大納言に至った。蹴鞠の名手として名高く、今様や和歌にもすぐれた。
本巻の第八百九十首、第八百九十四首も同じ「逢不逢恋」の題で、第八百八十一首も「遇不遇恋」という同じ趣の題で詠まれており、一度逢ってのちに逢えない恋の嘆きが、巻中に繰り返し取り上げられている。
初句「逢ひ見むと」の「逢ひ見る」は男女が契りを結ぶこと、「む」は意志の助動詞で、逢いたいと、の意である。
二句「言ひわたりしは」の「わたる」は動詞の連用形について、ずっと…し続ける意を表す。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、言い続けてきたことは、の意である。
三句「行く末の」は将来の、の意で、逢った後の日々を指す。
四句「物思ふことの」は恋の物思いをすることの、の意である。
結句「はしにぞありける」の「はし」は端で、物事の始まりの意である。「ぞ」は強意の係助詞で、「ける」と連体形で結ぶ。「けり」は気づきの詠嘆で、始まりであったのだ、と今になって悟った思いを示す。
あひみる:男女が契りを結ぶ
いひわたる:言い続ける
はし:物事の始まり、端緒
- 作者
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藤原成通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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吹く風に堪へぬ梢の花よりも 留めがたきは涙なりけり
- 次の歌
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恋ひわびてあはれとばかりうち嘆く ことよりほかの慰めぞなき