山巡る雲の下にやなりぬらん
裾野の原に時雨過ぐなり
- 歌の意味
-
山を巡る雲の下になったのだろうか。裾野の原を時雨が通り過ぎてゆく音がする。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 408
詞書「時雨の歌とてよめる」
時雨の歌として詠んだものである。山を巡る雲の下に自分のいるあたりがなったのだろうか、裾野の原を時雨が通り過ぎてゆく音がする、と詠む。山の周りを巡る雲が裾野にまで下りてきて、そこに時雨を降らせながら過ぎてゆくさまを、音によってとらえている。
作者の「前右京権大夫頼政」は兵庫頭源仲正の子である。保元、平治の乱を経て従三位に至り、源三位と呼ばれた。治承四年(1180)、以仁王を奉じて平家打倒の兵を挙げ、宇治で敗れて自害した。
本歌から第四百十首までの三首は、同じ詞書のもとに置かれた時雨の歌で、いずれも山の時雨を遠望する。前々歌の第四百五首の「山巡り」を受け、本歌は山を巡る雲を詠む。
初句「山巡る」は、山の周りを巡る、の意で、時雨を降らせる雲が山々を巡るさまをいう。本巻の第四百五首の「山巡り」と同じ語である。
二句「雲の下にや」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と連体形で結ぶ。
三句「なりぬらん」の「ぬ」は完了の助動詞、「らん」は現在推量の助動詞で、雲の下になったのだろうか、と推し量る。ここで句切れとなる。
四句「裾野の原に」の「裾野」は山のふもとのなだらかに広がる野である。
結句「時雨過ぐなり」の「なり」は音による推定の助動詞で、時雨が通り過ぎる音がする、の意である。
すその:山のふもとのなだらかに広がる野
- 作者
-
源頼政
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
うたた寝は夢や現に通ふらむ 覚めても同じ時雨をぞ聞く
- 次の歌
-
時雨れゆく遠の外山の峰続き 移りもあへず雲隠るらん