待てと言ひて頼めし秋も過ぎぬれば
帰る山路の名ぞかひもなき
- 歌の意味
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待っていてくれと言って当てにさせた秋も過ぎてしまったので、帰るという名を持つ帰山の山路の名も、何のかいもないことだ。
- 鑑賞
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巻第七 離別歌 493
詞書「夏ころ、越の国へまかりける人の、秋は必ず上りなん、待てと言ひけるが、冬になるまで上りまうで来ざりければ、遣はしける」
夏の頃に越の国へ下った人が、秋には必ず都へ上ろう、待っていてくれと言ったのに、冬になるまで上って来なかったので、贈った歌である。待っていてくれと言って当てにさせた秋も過ぎてしまったので、帰るという名を持つ帰山の山路の名も何のかいもない、と詠む。越の国への道にある帰山の名を取り上げ、帰ってこない相手への恨みを、軽い戯れをまじえて伝えている。
作者の「西住法師」は俗名を源季政という院政期の僧である。西行の親しい友として知られ、ともに修行の旅をした。
初句「待てと言ひて」は、待っていてくれと言って、の意で、字余りの句である。
二句「頼めし秋も」の「頼め」は下二段活用の「頼む」の連用形で、当てにさせる意、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。必ず上ると約束して当てにさせた秋も、の意となる。
三句「過ぎぬれば」の「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、「ば」が付いて確定条件となり、過ぎてしまったので、の意である。
四句「帰る山路の」は、越前国の歌枕の帰山の山路で、「帰る」の名をもつ。本巻の第四百八十一首も「かへる山路」を詠み、送る側が雪に閉ざされても忘れるなと願ったのに対し、本歌は帰りを待つ側が帰ってこない人を恨む。
結句「名ぞかひもなき」の「ぞ」は係助詞で、「なき」と連体形で結ぶ。帰るという名も、帰ってこないのでは何のかいもない、の意である。
こしのくに:北陸地方の古称
たのむ:下二段活用で、当てにさせる、期待させる
かへるやま:越前国の歌枕の帰山で、「帰る」を掛ける
- 作者
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西住
- 出典
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千載和歌集
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心をも君をも宿にとどめ置きて 涙とともに出づる旅かな
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教へ置く形見を深く偲ばなん 身はあを海の波に流れぬ