惜しきかな形見に着たる藤衣
ただこの頃に朽ち果てぬべし
- 歌の意味
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惜しいことだ。亡き方の形見として着ているこの喪服の藤衣は、涙に濡れて、ほんのこの頃のうちに朽ち果ててしまうにちがいない。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 548
詞書「弾正尹為尊のみこに後れ侍りてよめる」
恋人であった弾正尹為尊親王に先立たれて詠んだ歌である。惜しいことだ、亡き方の形見として着ているこの喪服は、ほんのこの頃のうちに朽ち果ててしまうにちがいない、と詠む。喪服そのものを亡き人の形見として大切にしながら、流れつづける涙に濡れて、その形見さえすぐに朽ちてしまうと嘆き、悲しみの深さを表している。為尊親王は冷泉天皇の第三皇子で、長保四年(1002)に没した。
作者の「和泉式部」は越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことからこの名で呼ばれる。一条天皇の中宮彰子に仕え、情熱的な恋の歌で知られる。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「惜しきかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、惜しいことだ、の意である。ここで句切れとなる。
二句「形見に着たる」の「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形で、形見として着ている、の意である。喪服を亡き人の形見とする。前歌の第五百四十七首の「形見」を受ける。
三句「藤衣」は、藤などの繊維で織った粗末な衣で、喪服をいう。本巻の第五百八十三首、第五百九十二首にも藤衣が詠まれる。
四句「ただこの頃に」は、ほんのこの頃のうちに、すぐにも、の意である。
結句「朽ち果てぬべし」の「ぬ」は強意の助動詞、「べし」は推量の助動詞で、朽ち果ててしまうにちがいない、の意である。涙に濡れつづけて朽ちることを言外にいう。
だんじやうのゐん:弾正台の長官
おくる:死に後れる、先立たれる
ふぢごろも:藤などの繊維で織った粗末な衣で、喪服
くちはつ:すっかり朽ちてしまう
- 作者
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和泉式部
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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植ゑ置きし人の形見と見ぬだにも 宿の桜を誰か惜しまぬ
- 次の歌
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くちなしの園にや我が身入りにけん 思ふことをも言はでやみぬる