常よりもまた濡れ添ひし袂かな
昔をかけて落ちし涙に
- 歌の意味
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いつもよりもいっそう濡れまさった袂であることだ。昔のことを心にかけて思い出し、こぼれ落ちた涙で。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 566
詞書「上東門院に参りて侍りけるに、一条院の御ことなど思し出でたる御気色なりける朝に、奉りける」
上東門院のもとに参上した折、女院が亡き一条院のことなどを思い出しているご様子であった、その翌朝に差し上げた歌である。いつもよりいっそう濡れまさった袂であることだ、昔を思い出してこぼれた涙で、と詠む。女院の悲しみに触れて、ともに一条院の在世の頃を思い出して泣いたことを伝え、女院の心に寄り添っている。
作者の「赤染衛門」は赤染時用の娘である。大江匡衡の妻となり、上東門院彰子に仕えた。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
次歌の第五百六十七首は、本歌に答えた上東門院の返歌である。
初句「常よりも」は、いつもよりも、の意である。本巻の第五百八十二首も同じ「常よりも」で始まる。
二句「また濡れ添ひし」の「濡れ添ふ」は、いっそう濡れる意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
三句「袂かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる。
四句「昔をかけて」の「かけ」は心にかける意で、一条院在世の昔を思い出して、の意である。
結句「落ちし涙に」は、こぼれ落ちた涙で、の意で、上の句の理由を後から示す倒置である。
たもと:袖、また袖の垂れ下がった部分
ぬれそふ:いっそう濡れる
かく:心にかける、思いを及ぼす
- 作者
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赤染衛門
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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年を経て君が見馴れし真澄鏡 昔の影は止まらざりけり
- 次の歌
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現とも思ひわかれで過ぐる間に 見し世の夢を何語りけん