包めども堪へぬ思ひになりぬれば
問はず語りのせまほしきかな
- 歌の意味
-
包み隠していても、もはや堪えきれない思いになってしまったので、人に問われもしないのに自分から語り出したくなることだ。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 649
詞書は前の歌に続き「題しらず」
包み隠していても堪えきれない思いになってしまったので、問われもしないのに語り出したい、と詠む。忍ぶ恋が限界に達し、誰に尋ねられたわけでもないのに思いを打ち明けたくなる心の動きを、率直に表している。
作者の「大納言成通」は藤原成通である。権大納言藤原宗通の子で、大納言に至った。蹴鞠の名手として名高い。
前歌の第六百四十八首と同じ初句「包めども」で始まる。前歌が涙によって人に知られたと詠んだのに対し、本歌は自ら語り出したくなる心を詠んで応じている。
初句「包めども」は、包み隠していても、の意で、前歌の初句と同じ句である。
二句「堪へぬ思ひに」の「堪へ」は堪える意、「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形で、堪えきれない思いに、の意である。本巻の第六百八十三首の結句「堪へぬけしきは」と共通する。
三句「なりぬれば」の「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、「ば」が付いて、なってしまったので、の意となる。
四句「問はず語りの」の「問はず語り」は、人に尋ねられもしないのに自分から語ることをいう。
結句「せまほしきかな」の「まほしき」は希望の助動詞「まほし」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、したいことだ、の意である。
とはずがたり:人に問われないのに自分から語ること
たふ:こらえる、我慢する
- 作者
-
藤原成通
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
包めども涙に袖のあらはれて 恋すと人に知られぬるかな
- 次の歌
-
大方の恋する人に聞き馴れて 世の常のとや君思ふらん