人知れず物思ふころの袖見れば
雨も涙もわかれざりけり
- 歌の意味
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人知れず恋の物思いをしているこの頃の袖を見ると、雨に濡れたのか涙に濡れたのか、見分けがつかないことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 658
詞書「雨の降る日、忍びたる人のもとに遣はしける」
雨の降る日に、人目を忍んで通う相手のもとに贈った歌である。人知れず物思いをしているこの頃の袖を見ると、雨も涙も区別がつかない、と詠む。雨の日の景をそのまま恋の嘆きに転じ、袖を濡らすのが雨か涙かわからないほど泣いていると訴えて、逢えない思いの深さを伝えている。
作者の「堀河右大臣」は藤原頼宗である。摂政太政大臣藤原道長の子で、右大臣に至り、堀河右大臣と呼ばれた。歌人として知られ、家集に「入道右大臣集」がある。
本巻の第六百八十六首は恋の物思いの涙を軒の玉水に見立て、第六百九十二首は袖に時雨が降り注ぐと詠み、雨と涙を重ねる趣向が共通する。
初句「人知れず」は、人に知られないで、の意である。本巻の第六百七十八首、第六百八十四首、第六百八十七首も同じ句を詠む。
二句「物思ふころの」の「物思ふ」は恋の物思いをする意で、この頃の、の意である。
三句「袖見れば」は、袖を見ると、の意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。
四句「雨も涙も」は、袖を濡らす雨と涙を並べて挙げる。
結句「わかれざりけり」の「わかれ」は区別がつく意の「分かる」の未然形、「ざり」は打消し、「けり」は気づきの詠嘆で、区別がつかないことだ、の意である。
わかる:区別がつく、見分けられる
しのぶ:人目を避けてひそかに通う
- 作者
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藤原頼宗
- 出典
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千載和歌集
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おぼつかなうるまの島の人なれや 我が言の葉を知らぬ顔なる
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たちしよりはれずも物を思ふかな なき名や野辺の霞なるらん