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恋しとも言はぬに濡るるたもとかな
心を知るは涙なりけり

歌の意味
恋しいとも口に出して言わないのに、濡れていく袂であることよ。私の心を知っているのは涙であったのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 662

詞書「題しらず」
 恋しいとも言わないのに濡れる袂だ、心を知っているのは涙であった、と詠む。言葉には出さない恋心を、涙だけが知っていて袂を濡らすという趣向で、抑えようとしても表に現れてしまう思いを詠んでいる。
 作者の「久我内大臣」は源雅通である。権大納言源顕通の子で、叔父源雅定の養子となった。内大臣に至り、久我内大臣と呼ばれた。
 本巻の第六百四十四首の「いつしか濡るるたもとかな」と三句を同じくし、涙が恋心を表すとする趣も共通する。また結句の「涙なりけり」は第六百八十八首、第六百九十七首の結句と同じである。

 初句「恋しとも」は、恋しいとも、の意である。
 二句「言はぬに濡るる」の「に」は逆接で、言わないのに濡れる、の意である。
 三句「たもとかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる。第六百四十四首の三句と同じ句である。
 四句「心を知るは」は、私の心を知っているのは、の意である。
 結句「涙なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、涙であったのだ、の意である。第六百八十八首、第六百九十七首の結句と同じ句である。

たもと:袖、袂
作者
源雅通
出典
千載和歌集
前の歌
人知れぬ木の葉の下の埋もれ水 思ふ心をかき流さばや
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思へども言はでしのぶの摺り衣 心の内に乱れぬるかな