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別れては形見なりける玉章を
慰むばかり書きもおかせで

歌の意味
別れたあとには形見となるものだったのだなあ、手紙というものは。それなのに、心が慰められるほどには書き残しておいてもくださらないで。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 854

詞書「絶えて後の形見といへる心を詠める」
 「絶えて後の形見」、すなわち恋が絶えたのちの形見の題で詠んだ歌である。別れたのちには形見となるものであった手紙を、慰めになるほども書き残してくださらないで、と詠む。恋の終わったあと、相手を偲ぶよすがとなるのは残された手紙だけであると気づき、それが心を慰めるほどには残されていないことを恨み嘆いている。
 作者の「久我内大臣」は源雅通である。村上源氏の出で、内大臣に至り、久我内大臣と呼ばれた。
 本巻の第八百八十四首も形見を題材とし、逢えない間の形見とした明け暮れの空を詠んでいる。

 初句「別れては」の「ては」は、別れたあとには、の意である。
 二句「形見なりける」の「形見」は別れた人を思い出すよすがとなるものである。「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形で、気づきの詠嘆を表す。形見となるものだったのだ、と今になって知った思いを示す。
 三句「玉章を」の「玉章」は手紙のことである。
 四句「慰むばかり」の「ばかり」は程度を示す副助詞で、心が慰められるほどに、の意である。
 結句「書きもおかせで」の「せ」は尊敬の助動詞「す」の連用形、「で」は打消の接続助詞で、書き置いてもくださらないで、の意である。言いさしの形で結び、恨みの余韻を残している。

かたみ:別れた人や亡き人を思い出すよすがとなるもの
たまづさ:手紙
作者
源雅通
出典
千載和歌集
前の歌
鶉鳴く賤屋に生ふる玉小菅 かりにのみ来て帰る君かな
次の歌
我が袖の涙やにほの海ならん かりにも人をみるめなければ