命をば逢ふに代へんと思ひしを
恋ひ死ぬとだに知らせてしかな
- 歌の意味
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命を逢うことと引き替えにしようと思っていたのに、それもかなわないので、せめて恋い焦がれて死ぬのだということだけでも、あの人に知らせたいものだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 734
詞書は前の歌に続き「題しらず」
命を逢うことと引き替えにしようと思っていたのに、せめて恋い死にするとだけでも知らせたい、と詠む。命と引き替えに一度は逢おうと思い定めていたが、それすらかなわぬまま死を迎えそうな今、せめて自分があなたを恋して死ぬのだということだけは知ってほしいという、切ない願いを表している。
作者の「寂超法師」は丹後守藤原為忠の子である。俗名は為経で、兄の寂念、弟の寂然とともに大原に隠棲し、大原三寂と呼ばれた。歌人で画家の藤原隆信の父である。
本巻の第七百三十首も命を逢瀬と引き替えにしようと詠み、本歌の上の句と同じ思いを表す。第七百二十五首はそれとは逆に、命に代えない逢瀬を願っている。
初句「命をば」の「ば」は係助詞「は」が濁ったもので、命を、と強めていう。
二句「逢ふに代へんと」の「ん」は意志の助動詞「む」で、逢うことと引き替えにしようと、の意である。本巻の第七百三十首の三句、四句「逢ふことに代へんほどまで」と同じ思いを詠む。
三句「思ひしを」の「を」は逆接の接続助詞で、思っていたのに、の意である。
四句「恋ひ死ぬとだに」の「だに」は最小限の願いを表す副助詞で、恋い死にするとだけでも、の意である。
結句「知らせてしかな」の「てしかな」は自己の願望を表す終助詞で、知らせたいものだ、の意である。
こひしぬ:恋い焦がれて死ぬ
かふ:引き替えにする
- 作者
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寂超
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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恋ひわびぬ茅渟の益荒男ならなくに 生田の川に身をや投げまし
- 次の歌
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恋しともまたつらしとも思ひやる 心いづれか先に立つらん