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杣川の浅からずこそ契りしか
などこの暮れを引き違ふらん

歌の意味
杣川が浅くないように、私たちは浅からぬ契りを交わしたのに、どうして今日のこの夕暮れの約束を、引き違えてしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 778

詞書は前の歌に続き「法住寺殿の殿上の歌合に、臨期違約恋といへる心を詠める」
 前歌と同じ法住寺殿の殿上の歌合で、「臨期違約恋」の題で詠んだ歌である。杣川のように浅からず契ったのに、どうしてこの暮れの約束をたがえるのだろうか、と詠む。材木を流す杣川の深さに二人の契りの深さを重ね、それほど深く約束したのに、いざその夕暮れになって約束を破る相手を恨んでいる。
 作者の「藤原盛方朝臣」は藤原顕時の子である。官人として仕え、歌人としても知られた。
 前歌の第七百七十七首、次歌の第七百七十九首と同じ題による三首の二首目である。本巻の第七百四十四首、第七百四十六首、第七百四十九首に続き、本歌もまた「暮れ」の約束を詠んでいる。

 初句「杣川の」の「杣川」は、杣山から切り出した材木を流す川で、二句の「浅からず」を導く。
 二句「浅からずこそ」の「こそ」は強意の係助詞で、三句の「しか」と係り結びをなす。杣川が浅くないように、浅からず、の意である。
 三句「契りしか」の「しか」は過去の助動詞「き」の已然形で、二句の「こそ」の結びである。こそ…已然形で文が続き、契ったのに、と逆接の意となる。ここで句切れとなる。
 四句「などこの暮れを」の「など」は疑問の副詞で、どうしてこの夕暮れの約束を、の意である。本巻の第七百四十四首などと同じく「暮れ」を詠む。
 結句「引き違ふらん」の「引き違ふ」は約束をたがえる意で、「引き」は初句の「杣川」の縁で材木を引くことを響かせる。「らん」は原因推量の助動詞「らむ」で、どうしてたがえるのだろう、の意である。

そまがは:杣山から切り出した材木を流す川
ひきたがふ:約束をたがえる
作者
藤原盛方
出典
千載和歌集
前の歌
今しばし空頼めにも慰めて 思ひ絶えぬる宵の玉梓
次の歌
思ひきや榻の端書きかきつめて 百夜も同じ丸寝せんとは