恋をのみしづのをだまきくるしきは
逢はで年経る思ひなりけり
- 歌の意味
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ただ恋ばかりをしてきて、倭文の苧環を繰るように繰り返し苦しいのは、逢えないまま年を経る思いなのであった。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 788
詞書は前の歌に続き「堀河院御時、百首歌奉りける時、恋の心を詠める」
前歌と同じく堀河百首の恋の歌である。ただ恋ばかりをして、倭文の苧環を繰るように苦しいのは、逢わないまま年を重ねる思いであった、と詠む。苧環の糸を繰り返し巻くさまに、絶えず繰り返される恋の苦しみを重ね、掛詞を重ねて、逢えないまま年月の過ぎる恋のつらさを表している。
作者の「中納言師時」は源師時である。左大臣源俊房の子で、権中納言に至った。日記「長秋記」を残し、堀河百首の作者の一人である。
本巻の第八百二十九首も結句に「しづのをだまき」を置き、苧環の糸を繰る縁で恋の繰り返しを詠む点で本歌と対応する。
初句「恋をのみ」は、ただ恋ばかりを、の意で、二句の「しつ」へつながる。
二句「しづのをだまき」の「しづ」は、恋ばかりを「し(為)つ」の意と、古代の織物「倭文(しづ)」とを掛ける。「をだまき」は紡いだ麻糸を巻いて玉にしたもので、糸を「繰る」ことから三句の「くるしき」を導く。本巻の第八百二十九首の結句と同じ語である。
三句「くるしきは」は、苧環の糸を「繰る」意と、「苦しき」とを掛ける。苦しいのは、の意である。
四句「逢はで年経る」の「で」は打消の接続助詞で、逢わないまま年を経る、の意である。
結句「思ひなりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、思いなのであった、の意である。
しづ:古代の織物である倭文。初句から続けて「恋をのみし(為)つ」の意を掛ける
をだまき:紡いだ麻糸を巻いて玉にしたもの
くる:苧環の糸を「繰る」意で、「苦し」を掛ける
- 作者
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源師時
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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独り寝る我にて知りぬ池水に つがはぬ鴛の思ふ心を
- 次の歌
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麻手干す東乙女の萱筵 しきしのびても過ぐす頃かな