宵の間も待つに心や慰むと
今来んとだに頼めおかなん
- 歌の意味
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せめて宵のうちだけでも、待つことで心が慰められるかと思うので、「すぐに行こう」とだけでも頼みに思わせておいてほしい。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 803
詞書は前の歌に続き「百首歌奉りける時、恋の心を詠める」
前歌と同じく久安百首の恋の歌である。宵のうちだけでも待つことで心が慰むかと、せめて今行こうとだけでも頼ませておいてほしい、と詠む。古今集の素性法師の歌「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」を踏まえる。素性の歌は「今来む」の言葉を頼みに夜明けまで待ち明かす女の嘆きであったが、本歌はその言葉さえもらえない身から、たとえ偽りでもよいから待つよすがとなる一言がほしいと願っている。
作者の「上西門院兵衛」は神祇伯源顕仲の娘である。待賢門院堀河の妹で、待賢門院に仕え、のちにその皇女の上西門院統子内親王に仕えた。久安百首の作者の一人である。
前歌は逢った翌朝に相手の心の行方を案じる歌であったが、本歌はまだ来ない相手を待つよすがを求める歌で、逢った後の不安と逢う前の願いとが並んでいる。
初句「宵の間も」は、せめて宵のうちだけでも、の意である。
二句「待つに心や」の「や」は疑問の係助詞で、待つことで心が、の意である。三句の「慰む」と連体形で結ぶ。
三句「慰むと」は「や」の結びで、慰められるかと思って、の意である。
四句「今来んとだに」の「今来ん」は、すぐに行こう、の意で、素性法師の歌の初句「今来むと」を踏まえる。「だに」は最小限の願望を示し、せめてそれだけでも、の意である。
結句「頼めおかなん」の「頼めおく」は、あらかじめ頼みに思わせておく意、「なん」は他に対する願望の終助詞で、頼ませておいてほしい、の意である。
たのめおく:あらかじめ頼みに思わせておく
- 作者
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上西門院兵衛
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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長からむ心も知らず黒髪の 乱れて今朝はものをこそ思へ
- 次の歌
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磯馴木のそなれそなれて伏す苔の まほならずとも逢ひ見てしかな