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水茎はこれを限りと書きつめて
せきあへぬものは涙なりけり

歌の意味
筆の跡は、これが最後と書き尽くしたけれども、せきとめきれないものは涙であったのだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 868

詞書「題しらず」
 筆の跡はこれが最後と書き尽くしたが、せきとめきれないのは涙であった、と詠む。恋の思いを手紙にこれが最後と書き尽くして区切りをつけたものの、涙だけはとどめることができないという嘆きを表している。書き終えることのできる文字と、とどめることのできない涙とを対比させ、言葉では尽くせない思いを伝えている。
 作者の「前右京権大夫頼政」は源頼政である。摂津源氏の源仲政の子で、従三位に至った。のちに以仁王を奉じて平氏打倒の兵を挙げ、宇治で敗れて自害した。歌人としても名高い。
 本歌の結句「涙なりけり」は本巻の第八百四十九首、第八百七十二首、第八百九十首と共通する。とりわけ第八百七十二首は四句を「せきやられぬは」とし、せきとめられない涙を詠む点で本歌とよく似ている。

 初句「水茎は」の「水茎」は筆、また筆跡のことで、手紙を指す。
 二句「これを限りと」はこれが最後と、の意で、最後の手紙として書いたことを示す。
 三句「書きつめて」の「書きつむ」は書き重ねる、書き尽くす意である。
 四句「せきあへぬものは」の「せく」は流れをせきとめる意で、「あへぬ」は…しきれない、の意である。せきとめきれないものは、の意となる。本巻の第八百七十二首の四句「せきやられぬは」と通じる。
 結句「涙なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、それは涙であったのだ、の意である。本巻の第八百四十九首、第八百七十二首、第八百九十首と同じ結句である。

みづくき:筆、また筆跡
かきつむ:書き重ねる、書き尽くす
せく:流れをせきとめる
作者
源頼政
出典
千載和歌集
前の歌
嘆きあまり憂き身ぞ今はなつかしき 君ゆゑ物を思ふと思へば
次の歌
誰もよもまだ聞きそめじ鶯の 君にのみこそ音しはじむれ