思ひかね越ゆる関路に夜を深み
八声の鳥に音をぞ添へつる
- 歌の意味
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恋しい思いに堪えかねて越えていく関所の道で、夜がまだ深いので、何度も鳴く明け方の鶏の声に、私の泣く声を添えたことだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 948
詞書「隔関路恋といへる心を詠める」
「関路を隔つる恋」という題で詠んだ歌である。思いに堪えかねて越える関路で、夜が深いので、八声の鳥に泣く声を添えたことだ、と詠む。恋しい人のもとへ向かおうと関を越える道で、夜が深くて関はまだ開かず、夜明けを告げて何度も鳴く鶏の声に、自分の泣く声を重ねたと詠む。中国の函谷関で、孟嘗君の食客が鶏の鳴きまねをして関の門を開けさせたという故事を思わせ、関を越えられないもどかしさと恋の嘆きを重ねている。
作者の「前中納言雅頼」は源雅頼である。権中納言源雅兼の子で、権中納言に至った。
本巻の第九百三十六首は「海路を隔つる恋」の題の歌で、海路を隔てた恋人のもとへ夢の幻が通うと詠み、本歌は関路を自ら越えていく嘆きを詠んで、海路と関路の隔てが対をなしている。また本歌の「音をぞ添へつる」は、第九百五首の「音を泣けば」、第九百六首の「音に泣きて」と、声を上げて泣くことを詠む点で通う。
初句「思ひかね」の「かね」は、しようとしてもできない意の「かぬ」の連用形で、恋しい思いに堪えかねて、の意である。
二句「越ゆる関路に」の「関路」は関所のある道で、題の「関路」を受ける。本巻の第九百三十六首の四句「波路を分けて」と、隔ての道を詠む点で対をなす。
三句「夜を深み」は、名詞に「を」、形容詞の語幹に「み」が付いて原因を表す語法で、夜が深いので、の意である。夜が深くて関がまだ開かないことを含む。
四句「八声の鳥に」の「八声の鳥」は夜明け前に何度も鳴く鶏をいう。函谷関の鶏鳴の故事を思わせる。
結句「音をぞ添へつる」の「音」は泣く声、「ぞ」は強意の係助詞で、完了の助動詞「つ」の連体形「つる」で結ぶ。鶏の声に自分の泣く声を添えた、の意である。本巻の第九百五首の初句「音を泣けば」と同じく、声を上げて泣くことを詠む。
せきぢ:関所のある道
やこゑのとり:夜明け前に何度も鳴く鶏
ね:泣く声
- 作者
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源雅頼
- 出典
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千載和歌集
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恋ひわぶる心は空に浮きぬれど 涙の底に身は沈むかな
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世に知らぬ秋の別れにうち添へて 人やりならず物ぞ悲しき