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世に知らぬ秋の別れにうち添へて
人やりならず物ぞ悲しき

歌の意味
世に例のないほどつらい秋との別れに加えて、誰に強いられたのでもない自分の恋心から、何とも悲しいことだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 949

詞書「九月晦日、女につかはしける」
 九月の末日、秋の最後の日に、女のもとへ送った歌である。世に例のない秋の別れに加えて、誰のせいでもなく物悲しい、と詠む。秋が去っていく九月晦日の別れの悲しさは格別であるが、それに加えて、誰に強いられたのでもない自分の恋心から、いっそう物悲しく思われると、季節との別れと恋の悲しさを重ねて、女に思いを伝えている。
 作者の「権中納言通親」は源通親である。内大臣源雅通の子で、のちに内大臣に至り、土御門内大臣と呼ばれた。後鳥羽院のもとで朝廷の実権を握った。
 本巻の第九百四十六首の「別れかな」と「別れ」の語を共有する。第九百四十六首が恋人との後朝の別れを詠むのに対し、本歌は秋という季節との別れに恋の悲しさを添えている。また第九百五十二首も「秋の夜」の恋を詠む。

 初句「世に知らぬ」は、世に例のない、比べようもない、の意である。
 二句「秋の別れに」は、秋が去っていくことへの別れに、の意で、詞書の「九月晦日」を受ける。本巻の第九百四十六首の三句「別れかな」と「別れ」の語を共有する。
 三句「うち添へて」の「うち」は接頭語で、さらに加えて、の意である。
 四句「人やりならず」は、人から強いられたのではなく自分の心から、の意である。秋の別れの悲しさに加え、自分の恋心ゆえの悲しさがあることを示す。
 結句「物ぞ悲しき」の「ぞ」は強意の係助詞で、形容詞「悲し」の連体形「悲しき」で結ぶ。何とも悲しいことだ、の意である。

ひとやり:他人に強いられてすること
つごもり:月の末日
作者
源通親
出典
千載和歌集
前の歌
思ひかね越ゆる関路に夜を深み 八声の鳥に音をぞ添へつる
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契りしにあらずなるとの浜千鳥 跡だに見せぬうらみをぞする