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契りしにあらずなるとの浜千鳥
跡だに見せぬうらみをぞする

歌の意味
約束した時とは違ってしまった、その鳴門の浜千鳥が足跡さえ見せないように、手紙さえよこさないあの人を、浦を見ながら恨むことだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 950

詞書「恋歌とて詠める」
 恋の歌として詠んだものである。約束した時とは違ってしまった鳴門の浜千鳥が跡さえ見せないように、手紙さえよこさない恨みをすることだ、と詠む。「なると」に「成る」と地名の「鳴門」を、千鳥の「跡」に足跡と筆跡を、「うらみ」に「浦見」と「恨み」を掛け、約束とは違って心変わりし、手紙の一通さえよこさない相手を恨む思いを、鳴門の浜の千鳥の景に重ねている。掛詞と縁語を重ねた技巧的な歌である。
 作者の「藤原経家朝臣」は大宰大弐藤原重家の子である。六条藤家の歌人で、のちに三位に至った。
 本巻の第九百十一首「あやしき鳥の跡の乱れを」と同じく、鳥の跡を手紙にたとえる。また第九百四十三首の「うらみは絶えぬ」と「うらみ」の語を共有し、ともに海辺の縁で「恨み」を詠む。

 初句「契りしに」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、約束した時に、の意である。
 二句「あらずなるとの」の「なると」は、約束とは違うように「成る」意と、阿波国の地名「鳴門」を掛ける。
 三句「浜千鳥」は浜辺にいる千鳥で、四句の「跡」を導く。
 四句「跡だに見せぬ」の「跡」は千鳥の足跡と、手紙の筆跡を掛ける。「だに」は副助詞で、跡さえ見せない、すなわち手紙さえよこさない、の意である。本巻の第九百十一首の結句「跡の乱れを」と共通する。
 結句「うらみをぞする」の「うらみ」は、浜辺の「浦」を「見」る意と、「恨み」を掛ける。「ぞ」は強意の係助詞で、「する」の連体形で結ぶ。「鳴門」「浜千鳥」「浦」が縁語となる。本巻の第九百四十三首の四句「うらみは絶えぬ」と「うらみ」の語を共有する。

なると:成る意と、地名の鳴門を掛ける
あと:千鳥の足跡と、手紙の筆跡を掛ける
うらみ:浦を見る意と、恨みを掛ける
はまちどり:浜辺にいる千鳥
作者
藤原経家
出典
千載和歌集
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