飽かで入らん名残をいとど思へとや
傾くままに澄める月かな
- 歌の意味
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見飽きないうちに沈んでいく名残惜しさをいっそう思えというのだろうか、西に傾くにつれてますます澄んでいく月であることよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1003
詞書「月の歌とて詠み侍りける」
月の歌として詠んだ歌である。見飽きないまま入ってしまう名残をいっそう思えというのか、傾くにつれて澄んでいく月であることよ、と詠む。沈みかけるほどにかえって美しく澄む月に、名残惜しさをいっそうかき立てられる心を、月の意図であるかのように問いかけている。
作者の「権中納言長方」は藤原長方である。藤原顕長の子で、権中納言に至った。藤原俊成の甥にあたり、日記『禅中記』を残した。
本巻の第九百九十九首の「傾く月に澄む心」に対し、本歌は「傾くままに澄める月」と詠み、傾く月と澄むことを共有しながら、心の澄むことと月の澄むことが対をなしている。
初句「飽かで入らん」の「で」は打消しの接続助詞で、見飽きないうちに沈んでしまうであろう、の意である。六音の字余りである。
二句「名残をいとど」の「名残」は別れたあとに残る思い、「いとど」は、いっそう、の意である。
三句「思へとや」の「思へ」は命令形、「や」は疑問の係助詞で、思えというのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
四句「傾くままに」は、傾くにつれて、の意である。本巻の第九百九十九首の四句「傾く月に」と応じる。
結句「澄める月かな」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、澄んでいく月であることよ、の意である。
なごり:別れたあとまで残る思い
いる:月が山の端などに沈む
- 作者
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藤原長方
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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琴の音を雪に調ぶと聞こゆなり 月冴ゆる夜の峰の松風
- 次の歌
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いかにせんさらでうき世は慰まず 頼みし月も涙落ちけり