住み馴れし宿をば出でて西へ行く
月をしたひて山にこそ入れ
- 歌の意味
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住み慣れた家を出て、西へと移っていく月を慕って、私も西の山に入るのだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1010
詞書「世を遁れてのち、西山にまかり籠るとて、人に遣はしける」
出家したのち、京の西山に籠ることになり、人に送った歌である。住み慣れた家を出て、西へ行く月を慕って山に入るのだ、と詠む。西へ沈んでいく月を追うように西山に籠ることを、西方浄土を慕う心に重ね、俗世を捨てて仏道に入る決意を伝えている。
作者の「平実重」は平安時代後期の人で、伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千七首の「月をしたへばや山の端にのみ思ひいるらん」と、月を慕って山に入ることを詠む点で対応している。第千七首が山に入りたいと思う心を詠むのに対し、本歌は実際に山に入る身を詠んでいる。
初句「住み馴れし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、住み慣れた、の意である。
二句「宿をば出でて」の「をば」は「を」を強めたもので、家を出て、の意である。
三句「西へ行く」は、西へ移っていく、の意で、月の運行とともに西方浄土を思わせる。
四句「月をしたひて」の「したふ」は、慕う、後を追う意である。本巻の第千七首の三句「したへばや」と応じる。
結句「山にこそ入れ」の「こそ」は強意の係助詞で、已然形「入れ」で結ぶ係り結びである。山に入るのだ、の意で、月が山に入ることと、自分が山に籠ることを重ねている。
のがる:世を逃れる、出家する
にしやま:京の西方の山々、隠棲の地とされた
したふ:慕う、後を追う
- 作者
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平実重
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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霜冴ゆる庭の木の葉を踏み分けて 月は見るやと訪ふ人もがな
- 次の歌
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ふるさとの板井の清水みくさゐて 月さへすまずなりにけるかな