今までになど沈むらん貴船川
かばかり早き神を頼むを
- 歌の意味
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今まで、どうしてわが身は沈んでいるのだろう。貴船川の流れのように、これほど霊験の早い神を頼みにしているのに。
- 鑑賞
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巻第二十 神祇歌 1270
詞書「蔵人にならぬことを嘆きて、年ごろ賀茂の社に詣で侍りけるを、二千三百度にも余りける時、貴布禰の社に詣でて、柱に書き付け侍りける。かくて後なん、ほどなく蔵人になり侍りける、近衛院の御時なり」
蔵人に任じられないことを嘆いて長年賀茂社に参詣し、それが二千三百度にも余った時、貴船社に参詣して柱に書きつけた歌である。その後ほどなく蔵人になったといい、近衛天皇の御代のことである。今までどうして沈んでいるのだろう、貴船川のようにこれほど早い神を頼むのに、と詠む。流れの速い貴船川に、願いをすぐにかなえる霊験の速さを重ね、それなのにいまだ沈んだままの身を神に訴えている。
作者の「平実重」は平安時代後期の官人で、詞書によれば近衛天皇の御代に蔵人となった。伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千二百六十二首と同じく、不遇に沈む身を神に訴えてのちに願いがかなった歌で、同歌の「沈みし」と本歌の「沈むらん」とが響き合う。本巻の第千二百七十四首も貴船川を詠んでいる。
初句「今までに」は、今に至るまで、の意である。
二句「など沈むらん」の「など」は、どうして、の意で、「らん」は原因推量の助動詞「らむ」の連体形である。「沈む」は官途に恵まれず不遇でいる意で、川の縁語となっている。ここで句切れとなる。本巻の第千二百六十二首の四句「沈みしことは」と照らし合う。
三句「貴船川」は山城国の貴船社のそばを流れる川で、急流で知られる。本巻の第千二百七十四首の初句「貴船川」と同じ川である。
四句「かばかり早き」は、これほど早い、の意で、川の流れの速さに神の霊験の速さを重ねている。
結句「神を頼むを」の「を」は逆接の接続助詞で、頼みにしているのに、の意である。倒置によって二句の嘆きのわけを示している。
くらうど:天皇の側近に仕え、宮中の雑事や取り次ぎを担った官職
しづむ:不遇の境遇に落ちる、官位が進まない
- 作者
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平実重
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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杉が枝を霞籠むれど三輪の山 神のしるしは隠れざりけり
- 次の歌
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さりともと頼みぞかくる木綿襷 わがかたをかの神と思へば