ふるさとの板井の清水みくさゐて
月さへすまずなりにけるかな
- 歌の意味
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古びた里の、板で囲った井戸の清水は水草が生い茂って、月さえも澄んで映らず、住むこともなくなってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1011
詞書「故郷月を詠める」
「故郷の月」という題で詠んだ歌である。古びた里の板井の清水は水草が生えて、月さえも澄まなくなってしまった、と詠む。人の住まなくなった古い里では、井戸も手入れされずに水草が茂り、月の光も澄んで映らなくなったと、「すまず」に澄まないことと住まないことを掛けて、荒廃した故郷のさびしさを表している。
作者の「俊恵法師」は源俊頼の子である。東大寺の僧となり、京の白川の自坊を歌林苑と名づけて歌人たちを集めた。鴨長明の師で、小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻の第九百八十一首が荒れた古い都に「月ひとりすむ」と詠んだのに対し、本歌は荒れた故郷で「月さへすまず」と詠み、荒廃した地の月をめぐって反転した趣向となっている。
初句「ふるさとの」は、古びて荒れた里の、の意である。
二句「板井の清水」は、板で囲った井戸の清らかな水である。
三句「みくさゐて」の「みくさ」は水草、「ゐる」は生じる、茂る意で、水草が生い茂って、の意である。
四句「月さへすまず」の「すまず」は、月が澄まない意と、人が住まない意を掛ける掛詞である。本巻の第九百八十一首の結句「月ひとりすむ」と対をなす。
結句「なりにけるかな」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、なってしまったことだ、の意である。
いたゐ:板で囲った井戸
みくさ:水草
ゐる:草などが生じる、茂る
すむ:月が澄む意と、人が住む意を掛ける
- 作者
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俊恵
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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住み馴れし宿をば出でて西へ行く 月をしたひて山にこそ入れ
- 次の歌
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さもこそは影とどむべき世ならねど 跡なき水に宿る月かな