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月影の入りぬる跡に思ふかな
迷はむ闇のゆくすゑの空

歌の意味
月の光が沈んでしまったあとで思うことだ。私が迷うであろう、闇に閉ざされた行く末の空を。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1021

詞書「題しらず」
 月の光が沈んでしまったあとに思うことだ、迷うであろう闇の行く末の空を、と詠む。月が沈んで闇となった空を見て、仏の教えの光を失った世で、自分や人々が迷うであろう行く末の闇を思いやっている。月の光を救いの象徴とし、その失われたあとの不安を詠んだ思索的な歌である。
 作者の「法印慈円」は関白藤原忠通の子である。比叡山で修行し、のちに天台座主を四度つとめた。史論書『愚管抄』を著し、家集に『拾玉集』がある。小倉百人一首にも歌が採られている。
 本巻の第九百九十八首の「先立ちし人は闇にや迷ふらん」と、闇に迷うことを詠む点で通っている。第九百九十八首が死者の迷う闇を思うのに対し、本歌は自分の行く末の闇を思っている。

 初句「月影の」は、月の光が、の意である。
 二句「入りぬる跡に」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、沈んでしまったあとに、の意である。
 三句「思ふかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、思うことだ、の意である。ここで句切れとなり、以下は倒置となっている。
 四句「迷はむ闇の」の「む」は推量の助動詞で、迷うであろう闇の、の意である。本巻の第九百九十八首の二句から三句「闇にや迷ふらん」と応じる。
 結句「ゆくすゑの空」は、これから先の空、行く末の意で、体言止めとなっている。

ゆくすゑ:これから先、将来
つきかげ:月の光
作者
慈円
出典
千載和歌集
前の歌
山深み誰又かかる住まひして 真木の葉分くる月を見るらん
次の歌
この世にて六十は馴れぬ秋の月 死出の山路も面変はりすな