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世の中のありしにもあらずなりゆけば
涙さへこそ色変はりけれ

歌の意味
世の中が以前とはすっかり変わっていくので、流す涙までもが紅に色を変えてしまったことだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1027

詞書「運を恥づる百首歌詠み侍りける中に詠める」
 自らの不運を恥じる心を詠んだ百首歌の中の一首である。世の中が以前とは違ったものになっていくので、涙までも色が変わってしまった、と詠む。世の移り変わりとともに自分の境遇も昔とは違ってしまった嘆きの深さを、悲しみのあまり涙が血の色に変わるという紅涙の表現で訴えている。
 作者の「源俊頼朝臣」は源経信の子である。堀河院歌壇の中心として活躍し、白河院の命により『金葉和歌集』を撰進した。歌論書『俊頼髄脳』を著し、小倉百人一首にも歌が採られている。
 本巻の第千二十四首から続く述懐の歌である。世の中の変わりゆくことを詠む点で、のちの第千三十一首の「何事も変はりゆくめる世の中に」とも通っている。

 初句「世の中の」は、世の中が、の意で、世間の様子と自分の境遇の両方を含む。本巻の第千三十一首の三句「世の中に」と応じる。
 二句「ありしにもあらず」の「ありし」は以前の状態の意で、以前とは違って、の意である。八音の字余りである。
 三句「なりゆけば」の「ば」は確定条件で、なっていくので、の意である。
 四句「涙さへこそ」の「さへ」は添加の副助詞で、涙までもが、の意である。「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」で結ぶ。
 結句「色変はりけれ」の「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、色が変わってしまったことだ、の意である。悲しみのあまり流す血の涙、紅涙を表す。

ありし:以前の、昔の
いろかはる:悲しみのあまり涙が紅に変わる
作者
源俊頼
出典
千載和歌集
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