物思ふ心や身にも先立ちて
憂き世を出でんしるべなるべき
- 歌の意味
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思い悩むこの心こそが、身よりも先に立って、つらい世を出てゆく道しるべとなるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1078
詞書「嘆くこと侍りける頃、詠み侍りける」
嘆かわしいことがあったころに詠んだ歌である。思い悩む心が身よりも先立って、憂き世を出る道しるべとなるのだろうか、と詠む。身はまだ俗世にとどまっているが、物思いに沈む心はすでに世を離れたいと思っている。その心が先に立って、やがて身をも出家へと導く手引きとなるのだろうかと、嘆きの中に遁世への思いを見いだしている。
作者の「前左衛門督公光」は藤原公光である。藤原季成の子で、権中納言、左衛門督に至ったが、のちに官を解かれた。
本巻の第千六十首と同じく「嘆くこと侍りける頃」の詞書を持ち、嘆きの中の物思いを詠む点で通う。
初句「物思ふ」は、思い悩む、の意である。
二句「心や身にも」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「べき」で結ぶ。「心」と「身」を対比させている。本巻の第千九十六首も「心」と「身」の関わりを詠む。
三句「先立ちて」は、身よりも先に立って、の意である。
四句「憂き世を出でん」は、つらい世を出ていこうとする、の意で、出家を指す。
結句「しるべなるべき」の「しるべ」は道案内、手引きの意で、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形として係り結びの結びとなる。
しるべ:道案内、手引き
ものおもふ:思い悩む
- 作者
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藤原公光
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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春日山松に頼みをかくるかな 藤の末葉の数ならねども
- 次の歌
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数ならで年経ぬる身は今さらに 世を憂しとだに思はざりけり