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世の中は憂き身に添へる影なれや
思ひ捨つれど離れざりけり

歌の意味
世の中というものは、つらいわが身に寄り添う影なのだろうか。思い捨てようとしても、離れずについてくることだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1161

詞書「反歌」
 前歌の第千百六十首は、堀河院の御代に百首歌を奉った折、述懐の歌として詠んだ長歌で、本歌はその長歌に添えられた反歌である。世の中はつらい身に添う影なのだろうか、思い捨てても離れないことだ、と詠む。長歌で不遇の身の上を嘆き、後の世を願いながらも思う人々がほだしとなって果たせないと述べたことを受け、捨てようとしても捨てきれない俗世への思いを、身から離れない影にたとえて一首にまとめている。
 作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院の歌壇で活躍し、白河院の命により『金葉和歌集』を撰進した。
 本巻は長歌、旋頭歌、折句、物名、誹諧歌など、通常の短歌とは異なる形式や趣向の歌を集めた巻で、本歌は巻頭の長歌に続く反歌である。巻末の第千二百一首が、勤めれば極楽に至ると詠んで巻を閉じるのに対し、巻頭近くの本歌は離れがたい俗世を嘆いており、巻の初めと終わりが、世を捨てかねる心と仏道に至る心とで呼応している。

 初句「世の中は」は、俗世、世間の意で、一首の主題を示している。
 二句「憂き身に添へる」の「憂き身」はつらいわが身、「添へる」は寄り添っている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「影なれや」の「影」は身に付き従う影法師で、「なれや」は断定の助動詞「なり」の已然形に疑問の係助詞「や」が付いた形で、影なのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「思ひ捨つれど」は、思い捨てるけれども、の意で、長歌で後の世を願いながら果たせないと詠んだ心を受けている。
 結句「離れざりけり」の「けり」は詠嘆の助動詞で、離れないことだ、の意である。影が身から離れないのと同じく、世の中も身から離れないことに気づいた嘆きを表している。

はんか:長歌のあとに添えて、その内容をまとめたり補ったりする短歌
じゆつくわい:わが身の不遇や思いを述べること
作者
源俊頼
出典
千載和歌集
前の歌
あしたづは霞を分けて帰るなり 迷ひし雲路けふや晴るらん
次の歌
駒並めていざ見に行かん竜田川 白波寄する岸のあたりを