夜のほどにかりそめ人や来たりけん
淀の真菰のけさみだれたる
- 歌の意味
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夜のうちに、かりそめの人がやって来たのだろうか。淀の真菰が、今朝は乱れている。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1169
詞書「五月雨を詠める」
物名の歌で、「さみだれ」という語を、結句の「けさみだれたる」の中に隠して詠み込んでいる。夜のうちにかりそめの人が来たのだろうか、淀の真菰が今朝乱れている、と詠む。表向きは、淀の水辺の真菰が乱れているのを見て、夜の間に誰かが仮に立ち寄ったのだろうかといぶかる歌で、乱れた真菰に人の訪れの跡を見るところに、恋の気配を漂わせている。
作者の「いつみしきふ」は和泉式部である。越前守大江雅致の娘で、情熱的な恋の歌に優れ、中古三十六歌仙の一人に数えられる。
本歌から本巻の第千百七十九首までは物名の歌が並ぶ。物名は、物の名を歌の意味とは関わりなく一首の中に隠して詠み込む技法で、本歌はその一連の一首目である。
初句「夜のほどに」は、夜のうちに、の意である。
二句「かりそめ人や」の「かりそめ人」は、仮にちょっと立ち寄った人の意で、「かり」に真菰を刈る意が響く。「や」は疑問の係助詞で、三句の「けん」で結ぶ。
三句「来たりけん」の「けん」は過去推量の助動詞「けむ」の連体形で、係り結びの結びとなる。来たのだろうか、の意で、ここで句切れとなる。
四句「淀の真菰の」の「淀」は山城国の歌枕で、淀川のほとりの水辺である。「真菰」は水辺に生える草で、刈って筵などにした。
結句「けさみだれたる」は、今朝乱れている、の意で、「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形である。「けさみだれ」の中に、物名の「さみだれ」が隠されている。
さみだれ:陰暦五月ごろに降り続く長雨、物名の題として結句に隠されている
まこも:水辺に生えるイネ科の草、刈って筵などにした
もののな:物の名を歌の意味と関わりなく一首の中に隠して詠み込む技法、物名
- 作者
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和泉式部
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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なにとなく物ぞ悲しき秋風の 身にしむ夜半の旅の寝覚めは
- 次の歌
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跡絶えて訪ふべき人もおもほえず たれかは今朝の雪を分け来ん