古典和歌stream

今日よりは荻の焼原かき分けて
若菜摘みにと誰を誘はん

歌の意味
今日からは、荻の焼け野原をかき分けて、若菜を摘みに行こうと誰を誘おうか。
鑑賞
巻第一 春歌上 3

詞書は前の歌に続き「春立つ日よめる」
 立春を迎えた今日から、野焼きの跡の荻原をかき分けて若菜摘みに行こうと、誘う相手を思いめぐらす歌である。春の野遊びへの期待と、ともに楽しむ人を求める心が素直に表れている。
 前歌と同じく立春の日の詠である。春になったことで、冬の間は閉ざされていた野の楽しみが始まる喜びを詠んでいる。
 作者の「兼盛王」は平兼盛である。光孝天皇の玄孫にあたり、篤行王の子である。天暦四年に臣籍に下って平の姓を賜り、のちに駿河守となった。三十六歌仙の一人である。

 初句「今日よりは」は、立春の今日を境に季節が改まったことを示す。前歌の第二首と同じく、暦の上の春の始まりを起点にしている。
 二句「荻の焼原」は、早春に野焼きをした荻原の跡をいう。焼け跡から若菜が芽吹く情景を思わせる。
 三句「かき分けて」は、焼け残った荻の茎を押し分けて進む動作を表す。
 四句「若菜摘みにと」は、春の野の代表的な行事である若菜摘みを示す。若菜の主題は、次に続く子の日の歌々へとつながっていく。
 結句「誰を誘はん」の「ん」は意志と推量を表し、誰を連れて行こうかと思いめぐらす心を表す。

やけはら:野焼きをしたあとの野原
わかな:春の初めに摘む食用の草
作者
平兼盛
出典
後撰和歌集
前の歌
春立つと聞きつるからに春日山 消えあへぬ雪の花と見ゆらむ
次の歌
白雲の上知る今日ぞ春雨の ふるにかひある身とは知りぬる