古典和歌stream

七夕のあかぬ別れもゆゆしきを
今日しもなどか君が来ませる

歌の意味
七夕の二星の名残惜しい別れさえ不吉に思われるのに、よりによって今日という日に、どうしてあなたはおいでになったのか。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1083

詞書「円融院御屏風に、七夕祭りしたる所に籬のもとに男立てり」
 七夕の二星の名残惜しい別れさえ不吉に思われるのに、よりによってその七夕の今日、どうしてあなたはおいでになったのかと詠む歌である。詞書から、円融天皇の御代の屏風に描かれた、七夕祭りをしている家の籬のもとに男が立っている絵に添えた歌とわかる。家の内の女の立場から、逢えば別れの悲しみが待つ七夕の日に訪れた男をとがめる形で、恋の情趣を描いている。
 作者の平兼盛は、光孝天皇の後裔で、王族から臣籍に下って平の姓を賜り、駿河守などを務めた。天徳内裏歌合で壬生忠見と競ったことで知られ、三十六歌仙に数えられる。

 初句「七夕の」は、七夕の二星の、の意である。前歌の第千八十二首、本巻の第千八十六首とともに、七夕の星を初句に詠む歌が並んでいる。
 二句「あかぬ別れも」は、名残惜しい別れも、の意で、「あかぬ」は満ち足りない、心残りがある意である。次歌の第千八十四首の四句「あかぬ別れの」、本巻の第千九十首の四句「あかぬ別れを」と同じ語を共有している。
 三句「ゆゆしきを」は、不吉で忌まわしいのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
 四句「今日しもなどか」は、よりによって今日、どうして、の意で、「しも」は強意の副助詞、「か」は疑問の係助詞である。
 結句「君が来ませる」は、あなたがおいでになったのか、の意で、「来ます」は「来」の尊敬語、「る」は完了の助動詞「り」の連体形であり、四句の「か」を受けた係り結びである。

まがき:籬。竹や柴などで目を粗く編んだ垣
きます:来ます。「来」の尊敬語で、おいでになる
作者
平兼盛
出典
拾遺和歌集
前の歌
七夕は空に知るらんささがにの いとかくばかり祭る心を
次の歌
朝戸開けて眺めやすらん織女の あかぬ別れの空を恋ひつつ