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七夕は空に知るらんささがにの
いとかくばかり祭る心を

歌の意味
七夕の星は空の上で知っているだろう。蜘蛛が糸をかけるように、私が糸をかけて、これほどまでに心をこめて祭るこの心を。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1082

詞書「屏風に七月七日」
 七夕の星は空の上で知っているだろう、蜘蛛が糸をかけるように糸をかけて、これほど心をこめて祭る私の心を、と詠む歌である。詞書から、七月七日の行事を描いた屏風の絵に添えた歌とわかる。七夕の夜に糸や針を供えて技芸の上達を願う乞巧奠の習わしを背景に、祭る人の切なる思いを詠んでいる。
 本巻は雑の部の秋の巻で、四季の部に入らない秋の歌を集め、後半では冬から年の暮れの歌に及んでいる。巻頭のこの歌から七夕の歌が続き、巻末の第千百五十八首は年の暮れに白髪を嘆く歌で結ばれており、年に一度の七夕の祭りで始まり、一年の終わりで閉じる構成となっている。
 作者の「源したかふ」は源順である。嵯峨源氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読にあたり、辞書の和名類聚抄を編んだ。三十六歌仙に数えられる。

 初句「七夕は」は、七夕の星は、の意で、牽牛と織女の二星、とりわけ織女をいう。次歌の第千八十三首、本巻の第千八十六首も七夕の星で始まり、七夕の歌が並んでいる。
 二句「空に知るらん」は、空の上で知っているだろう、の意で、「らん」は現在推量の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌で、何を知るのかを下の句で倒置して示している。
 三句「ささがにの」は、蜘蛛をいう語で、「いと」にかかる枕詞としても用いられる。七夕に蜘蛛が供え物に糸をかけると願いがかなうとされた。
 四句「いとかくばかり」は、「いと」が蜘蛛の「糸」と、たいそうの意の「いと」を掛け、「かく」が糸を「掛く」と、このようにの意の「斯く」を掛ける掛詞である。「ささがに」と「糸」「掛く」は縁語をなす。本巻の第千八十七首の二句「我が貸す糸は」と、七夕に供える糸を詠む点で通じている。
 結句「祭る心を」は、祭る心を、の意で、二句の「知るらん」の目的語を倒置して結んでいる。

ささがに:細蟹。蜘蛛の古名
いと:蜘蛛の「糸」と、たいそうの意の「いと」を掛ける
かく:糸を「掛く」意と、このようにの意の「斯く」を掛ける
作者
源順
出典
拾遺和歌集
前の歌
いたづらに老いぬべらなり大荒木の 森の下なる草葉ならねど
次の歌
七夕のあかぬ別れもゆゆしきを 今日しもなどか君が来ませる