松も引き若菜も摘まずなりぬるを
いつしか桜はやも咲かなむ
- 歌の意味
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小松も引かず、若菜も摘まずに終わってしまったので、桜よ、一日も早く咲いてほしいものだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 5
詞書「朱雀院の子日におはしましけるに、障ること侍りてえ仕うまつらで、延光朝臣につかはしける」
朱雀院の子の日の遊びに差し支えがあってお供できなかった残念さを詠み、次の花の季節にこそはと桜の早い開花を願う歌である。逃した楽しみを惜しみつつ、次の機会への期待を込めている。
詞書によれば、朱雀院が子の日の遊びにお出かけになった折、作者は用事があってお供できず、源延光に贈った歌である。延光は代明親王の子で、院の近くに仕えた人物である。次歌はこれに対する院の返歌である。
作者の「左大臣」は藤原実頼である。藤原忠平の長男で、後撰和歌集の撰集当時は左大臣であり、のちに関白太政大臣に至った。小野宮家の祖である。
初句「松も引き」は、子の日に野に出て小松を根ごと引き抜く行事を示す。次歌の第六首の「まつ」と響き合っている。
二句「若菜も摘まず」は、子の日に行う若菜摘みを示し、初句の「も」と並べて、どちらも果たせなかったことを表す。
三句「なりぬるを」は、そのまま終わってしまったことを表し、下の句への逆接的なつなぎとなっている。
四句「いつしか桜」の「いつしか」は、早く、と待ち望む気持ちを表す。子の日の楽しみを逃した代わりに、次の花見に思いを向けている。
結句「はやも咲かなむ」の「なむ」は他に対する願望を表す終助詞で、桜に早く咲いてほしいと願っている。
ねのひ:正月の初めの子の日に、野に出て小松を引き若菜を摘む行事
さはる:差し支えがある
つかうまつる:お仕えする、お供する
- 作者
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藤原実頼
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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白雲の上知る今日ぞ春雨の ふるにかひある身とは知りぬる
- 次の歌
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まつに来る人しなければ春の野の 若菜も何もかひなかりけり