人知れぬ思ひは年も経にけれど
我のみ知るはかひなかりけり
- 歌の意味
-
人に知られない私の思いは、年月も経てしまったけれど、私だけが知っているのでは、甲斐もないことだった。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 673
詞書「女のもとにつかはしける」
人に知られない思いは年月を経たが、自分だけが知っているのでは甲斐がないと詠む歌である。詞書から、藤原実頼が女のもとに贈った歌とわかる。長く秘めてきた思いを、相手に知ってほしいと、ようやく打ち明けている。前歌の第六百七十二首の「人知れぬ心の内」を受け、秘めた思いは相手に届かなければ意味がないと嘆いている。
作者の「小野宮太政大臣」は藤原実頼である。関白藤原忠平の長男で、関白太政大臣に至り、小野宮流の祖となった。諡は清慎公である。
初句「人知れぬ」は、人に知られない、の意で、前歌の第六百七十二首の初句と同じ句である。
二句「思ひは年も」は、思いは年月も、の意である。
三句「経にけれど」は、経てしまったけれど、の意で、第六百三十三首の三句「年経れば」と同じく、年を経た思いを詠んでいる。
四句「我のみ知るは」は、私だけが知っているのは、の意である。
結句「かひなかりけり」は、甲斐がないことだった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
かひ:甲斐。効き目、値打ち
- 作者
-
藤原実頼
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
人知れぬ心の内を見せたらば 今までつらき人はあらじな
- 次の歌
-
人知れぬ涙に袖は朽ちにけり 逢ふ夜もあらば何に包まむ